WILL ~あなたの願い、叶えます~
釘づけになった更衣室のドアの向こうから、切れ切れに漏れ聞こえる会話は。

七瀬由紀が、例の学生時代からの恋人と別れた――もしくは別れかけている――ことを示唆していた。


この、タイミングで。

クリスマスを目前にして?

七瀬が取った連休に、報われないことが分かっていながらも休みを合わせてしまったのは、何かの啓示だったんだろうか。


揺さぶられる感情を、動揺を、隠す間もなくドアが開いて

「ぶ。店長、間抜け面ですよ」

朝一から、実に軽快な一撃を見舞ってくる。


そんな顔にさせてんのはお前なんだよ、と。
いっそはっきり言えてしまえれば、どんなに楽か。
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