重ねた嘘、募る思い
「よかったね、のん」
口元を覆っていたわたしの両手に真麻が自分の手を重ねて軽く振った。
目の前の真麻の目は潤んでいた。だけど眩しいくらいの満面の笑顔。
「な、にが?」
「なにがって、えっ?」
ぱちくりと真麻の長いまつ毛が上下する。
わたしがなにを尋ねているのか本当にわかっていない様子。
その視線が彷徨うようにわたしの後ろの陽さんに移される。それとほぼ同時にわたしを抱きしめていた陽さんの腕の力が緩んだ。
ずるりと身体がずれるような感覚にバランスをとろうと必死になったわたしは両腕をバタつかせ、それに気づいた陽さんが再び後ろから自身の胸に抱き寄せてくれた。
背中と後頭部に感じる陽さんの胸の温もりに再び包まれている実感がして思わず首だけを後ろに向けると顔を覗き込まれてしまう。顔っ、近いっ!
「好きだよ、のんちゃん」
「――え」
はじめて聞いた、そして向けられた『好き』という言葉に、わたしの名前が添えられた。