重ねた嘘、募る思い
陽さんが、わたしを、好き?
なんで? なんで? なんで?
じわっと目許が熱くなり、視界が歪んでゆく。
「うっ、嘘つきっ! ふたりはつき合ってるくせにっ!」
じたばたともがきだすわたしを抱きしめていた陽さんの腕が緩んだ隙をついて体勢を立て直すと、ふたりが声を揃えて「へぇっ?」と素っ頓狂な声をあげた。
こんな時にそんな嘘をつかれるだなんて思ってなかったからショックが大きすぎて冷静になんてなれなかった。
「ま、待って。誰と誰がつき合ってるって?」
慌てた陽さんの声がわざとらしく聞こえてうんざりする。
信じられない。この期に及んでまだそんなことを言うんだ。
「サイテーです……陽さん」
「ええっ?」
真麻が目を剥く。
なんでそんなに驚きの表情をしているのかわからなくてわたしひとりがパニック寸前だった。
「真麻と、つき合ってるくせにそんなこと言うなんて」
「ちょ、のん。勘違いしてる」
「何が勘違い? 真麻が言ったんじゃない! 陽さんとつき合うって……っ」
「なんで僕と真麻ちゃんが?」
一瞬の静寂が寝室に流れ、次の瞬間割れるような真麻の笑い声が響きだす。
しかも涙を流しながらおなかを抱えて。