重ねた嘘、募る思い
ずっとって、いつ。
そんな言葉を遮るように、陽さんがずいっとわたしに顔を近づけた。
「会社のセキュリティゲートにしょっちゅうひっかかるでしょ」
「う……」
全く否定できず、悔しいけど認めざるを得ない。
うんとうなずくと、なぜか満足げな陽さんが口元に笑みを浮かべて二度うなずいた。
「君の名前を知ったのは、社員証を拾った時。その話はしたよね。それからも何度もあのゲートにひっかかる君を見て、最初はなんてドジな子なんだろうかって思ってた」
返す言葉が見つからない。
確かにわたしほどあのゲートにひっかかる社員はいないだろう。
そしてそれを陽さんに見られていただなんて思ってもみなかった。恥ずかしさで顔が熱くなる。
両手で頬を覆うとやっぱり手より頬の方が熱い気がした。緊張のあまりか指先がひんやりしている。
「だけど見ているうちになんだかすごく心配になってきて。今日もあの子は無事にゲートを通れるのかって、見て確認しないと落ち着かなくなっていた。でもその時はまだ『心配な妹』みたいな目線で見てた」
コホン、と一度だけ咳払いをした陽さんが恥ずかしそうに後ろ頭を掻き毟る。
そんなに前からわたしの存在を知っていてくれたんだ。
クリスマスイブに嘘の名前を教えたのがすごく申し訳なくなった。
「いつか君と話してみたいって思った。だから、あの事故は僕にとってチャンスだったのに、自分から逃げてしまった」
事故?
思いつめたような表情で俯く陽さんの手はこたつの天板の上で硬く握りしめられていた。