重ねた嘘、募る思い
13.陽さんの思いと過去、そしてわたし
事故、と言われて思いつくような節はなかった。
陽さんが困ったような笑みを浮かべ、わたしをじっと見つめている。
「一ヶ月くらい前、駅のホームで転んだよね」
「――あっ」
言われて思い出し、一瞬お尻の辺りと右の足首が疼いたような気がした。
「み、見てたんですか?」
「見てた、というか……手を貸した」
ダブルでショックだった。
見られていただけでなく、あの時立ち上がらせてくれたのが目の前の陽さんだったなんて。
思い出しただけでおかしくなりそうで、両手で頬を覆って何度も首を振った。
そんなことをしても忘れられるはずないし、恥ずかしくてショックなはずなのにうれしい気持ちが紛れているかのように胸の辺りがぽわんとした。
あの時助けてくれた人にすごく感謝したのを思い出した。あの人が陽さんでよかったんだ。
「あ、あの時はありがとうございました」
急に冷静になってお礼を述べると、陽さんが畏まったように両肩をすくめて首を振った。