重ねた嘘、募る思い
陽さんもわたしに嘘をついていた。
あの時、イブにフラれたかわいそうな人だと少しだけ思ったかもしれない。ううん、思ってなかったかもしれない。そのくらいあの時のわたしの心情はあやふやだった。
startlineの宮内紘基に似ている陽さんに声をかけられ、わたしは舞い上がっていた。だから正直陽さんがどうしてそこにいたかなんてどうでもよかった。
ストーカーだなんて思わない。そこまでしてくれたことがうれしかった。だけど同時に浮かび上がった疑問。
「じゃあ、なんでパレードの時、少しゆっくり目に戻ってきてって言ったの?」
思わず身を乗り出して聞き返してしまった。
陽さんと真麻が目を丸くしてわたしを見つめている。
「やっぱり、あれのせいで先に帰ったの?」
逆に陽さんに問い質され、うなずくしかなかった。
すると「うわー」と悔しそうな声を上げて陽さんが頭を抱え込む。そして「失敗した」と髪をかき乱し始めた。
「違うんだよ、真麻ちゃんにのんちゃんの攻略法を聞こうと思って……そうなるとのんちゃんがいないほうが聞きやすいから少しだけ遅めに戻ってきてくれるとありがたいなあって思っただけなんだよーなにもかもが裏目に出てる。最悪だ」
「わたし、の、攻略法?」
「そりゃそんな風に言われれば自分が邪魔者だと思うわよね」
真麻がバシバシといい音を立てて陽さんの背中を叩く。
しかも攻略法って、どこかで聞いたことのあるフレーズ。
そうだ、わたしが真麻の攻略法を教えて協力することになってたんじゃない。