重ねた嘘、募る思い

「僕の恋人になってくれるよね」

 再び俯けてしまった顔を向けるのが恥ずかしくて、目だけで陽さんを見上げてから小さくコクリとうなずいた。
 それが今わたしが答えられるせいいっぱい。
 ホッとしたように陽さんの表情が緩むのを見て、うれしくなってしまう。
 陽さんにこんな顔をさせているのが自分の答えだと思ったら、さらによろこびがこみ上げてくるようだった。

「こんな時に風邪引くなんてバカだなあ。せっかくのんちゃんと、くぅ」

 仔犬の鳴き声のような呻きが陽さんの喉元から漏れ出す。
 前髪をくくり上げているから俯いていてもその心底悔しそうな表情は手に取るようにわかった。

「あ、の? 陽さん? どうしたんです?」
「っ! かあっ! 僕がどれだけ我慢してるかっ……」

 俯けていた頭をがっと持ち上げて、少し怒ったように陽さんがわたしに顔を近づけた。
 面白いくらい真っ赤な頬、たぶんわたしも同じくらいなんだろうなあとまるで他人事のように思ってた。
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