重ねた嘘、募る思い
「陽さん。熱があがってるんじゃないですか?」
握られていないほうの手で陽さんの額に触れると、冷却シート越しでも少しだけ暖かく感じた。
新しいものに貼り替えたほうがいいかもしれない。
するとおもむろにその手まで握りしめられた。
まるで両手を拘束されてしまったかのような状態。そして自然と視線が絡み合う。ほんの少し前まで揶揄するようなものだったのに、今は真逆で熱情がこもっているようにさえ見えた。
一瞬でこんなにも態度を変えられてしまうなんて、感情がついていかない。
ひとりでドギマギしているようでひどく情けないし、恋愛初心者と異名を与えられても無理はない。
「そんなことすると本気で風邪うつしちゃうよ」
「え?」
「キスしたいの我慢してるの。わかって」
「――あ」
少しだけ怒ったように、近づいていた身体を離そうとする陽さんをわたしが引き止めてしまった。
え、とわずかに見開かれる陽さんの瞼。
意図して引き止めたわけではない。結果的にそうなっただけ。
そう思っているはずなのに、心のどこかで期待している自分がいた。
離れないでほしい。
「うつ、して」