重ねた嘘、募る思い
一度生まれた欲は、とどまることを知らなくて。
募る思いは止められない。もう、我慢しなくていい。そう思ったら希っていた。
陽さんの表情が驚愕に変化してゆく。
「うつして、ほしい……です」
キスして、とは言えずにやっとの思いでそう告げると、額から手が退けられて指を絡めるようにぎゅっと握りしめられた。
息をつく間もなく目の前に陽さんの顔が近づけられ、唇同士が触れあう寸前の位置で止まる。
驚きのあまりにわたしは目を瞠ってしまっていた。
眼鏡越しに陽さんの目がわたしの瞳の奥を覗き込むように見つめている。
「目、閉じて」
掠れた声と淡い吐息がわたしの唇にかかる。
少しでも動いてしまったら触れてしまう位置にある陽さんの唇。うなずいてしまったら間違いなくこっちから口づけてしまう。
あまりの緊張、そしていきなり訪れたファーストキス目前のシチュエーションに口から心臓が飛び出してしまいそうだった。
だけど、願ったのはわたし。