重ねた嘘、募る思い
ぎゅっと音がするんじゃないかと思うくらい強く瞼を閉じると、そっと重ね合わされる唇の感触。
軽く吸いつかれた時に小さな淡い音がして、恥ずかしさがこみ上げてゆく。
高鳴りを増す自分の心音と陽さんの柔らかな唇を感じるだけで、頭の中が空っぽになったように何も考えられなってしまっていた。
優しくて、穏やかなキスに『好き』の気持ちが胸いっぱいに溢れそうになる。
うれしくて涙が出るってこういう感覚なんだ。
唇同士が離れた瞬間にじわっと湧き出るような寂しさを感じて瞼を開くと、柔らかな笑顔の陽さんがわたしを見つめていた。
「ありがとう、のんちゃん」
こつんと陽さんの額がわたしの額に押し当てられる。
冷却シートの柔らかい感触とわずかにミントのような香りがした。
大きな暖かい掌で両頬を包み込まれ、目を閉じたまま今までのことを思い返していた。
出逢い、そして再会。
その時ふと、急に浮上する不思議な感覚。
「陽さん、ずるいです」
「え?」
「あの時とキャラ、違いすぎます」
わたしの携帯ナンバーを奪うようにして、脅しの言葉まで浴びせかけた再会の時のこと。
それを言わずして理解した陽さんが「ああ」と小さな声をあげた。