重ねた嘘、募る思い
その日の夜は、陽さんの寝室で布団をふたつ並べて寝た。
布団の中で手を繋いで、たくさん話をした。
初めての時、なんで『ノブコ』と名乗ったのか聞かれ、自分の名前があっていないからと伝えると、そんなことないと言ってくれた。
自己評価がかなり低いよねと言われ、そんなことはないと返したけど逆にまた『そんなことない』で戻された。
わたしなんか、つい出そうになったその言葉を飲み込む。
もう『わたしなんか』もやめよう。
そう思えるようになったことがすごいと自分を褒めたい気持ちになっていた。
startlineの宮内紘基に似ているとよく言われ、最初は意識してなかったけど曲を聴いてみたら陽さんも好きになったそうだ。
わたしが紘くんを好きなことを真麻から聞いてうれしかったといろいろ話してくれた。
風邪の原因については渋って口を閉ざしていたけど、何度も聞いてやっと聞きだすことができた。
陽さんは違うと言っていたけど、やっぱり雪の中でわたしが来るのを待っていたのが直接の原因だと思う。
一緒に絵を描いた花壇の石垣に座って待っていたら声をかけられ、来てくれたと思ったのにその声の主は真麻だった。
『のんは来ない、待っても無駄』と突き放すように言われ、引きずられるようにして帰路に着いたと言う。
それで風邪を引いたなんて恥ずかしいから言いたくなかったのにとふくれる陽さんはやっぱり年上には見えず、なんだか母性本能みたいなものをくすぐられてしまう。
『恥ずかしい』と陽さんは言ったけど、たぶんわたしに罪悪感を抱かせないようにそう言ったに違いない。
なぜかそんな確信をしている自分がいた。