重ねた嘘、募る思い
「この気持ちがずっと変わらなかったら、その時は僕の家族になってほしい」
「えっ?」
「いきなりすぎて驚いた?」
くくっと陽さんの笑い声がする。
「絵を描く時の楽しそうな笑顔も、悔しそうに顰める表情も、悲しげに流す涙も、それに本気で怒ると怖いところも、意地っ張りで実は頑固なところも。直してほしいところはもちろんある。自己評価が低いところもそう。だけどそんなのお互い様だろうし、それでものんちゃんが好きだから、一緒にかわっていきたいって思うんだ」
そう言って、わたしのほうを向いた陽さんの優しい表情が暗闇に目が慣れたのかはっきりとわかった。
わたしの悪いところをひっくるめて、それでも受け入れてくれている陽さんはすごく大きなひとだと思った。
そして、このひとにこれ以上寂しい思いをさせたくないって思ったから。
――はい。
そう答えていた。
風邪が治ったら、ふたりで真麻にお礼に行こう。
そう約束して、わたし達はいつの間にか眠りについていた。
募りゆく思いを胸に、繋いだ手は離さずに。