重ねた嘘、募る思い
再びぴたっと醍醐くんの足が止まる。
まるでスローモーションのようにゆっくりと振り返った彼が目を眇めて私を睨んだ。
だけど顔全体が赤くてその凄みには怖さが感じられない。
いつも無表情の醍醐くんにこんな一面があっただなんて誰も気づいていないだろう。
醍醐くんは自分の足元を見て小さく舌打ちをし、苛立ちを隠せないといった態度が見え見えなんだけどここで笑ったらきっと彼の機嫌を損ねてしまうと思って必死に堪える。
「そのかわりさ、勉強教えてよ」
はあ? と目を見開いた醍醐くんがため息をこぼす。
「藤城さん、成績いいでしょ? 僕が教えることなんて」
「何を言いますか。毎度学年トップの醍醐くんに比べたら。私数学苦手で総合ランク下げてるんだよね。得意でしょ?」
「……まあ」
「じゃ、交渉成立ー」
近づいて掌を差し出すときょとんとされた。
契約の握手のつもりだったんだけど、頭がいいわりに察しが悪そうな醍醐くんの右手を取って強引に握らせた。