重ねた嘘、募る思い
 
 そんな時、事件が起きた。

 いつものようにとなり町の図書館で醍醐くんと向かい合わせで勉強していていると、机に誰かが手をついた。
 ふいに顔を上げるとそこにいたのは同じクラスの大里創一くん。
 大里くんは運動神経抜群のイケメンで体育の授業や体育祭に活躍するタイプのいわば脳筋だった。
 だけど見た目がいいからちやほやされていて人気がある。
 常に女子にも男子にも囲まれているような目立つグループの頭で、私は結構クラス内では仲良く話している方だった。

「ふたりっきりで何してるの?」

 意味深な笑みを浮かべて私達を見つめている大里くんを後目に、醍醐くんが迷惑そうにため息をついていたのを私は見逃さなかった。
 聞けば大里くんは祖母の家に泊まりに来ていて、図書館の本を返却してきてほしいと頼まれてしぶしぶここに来たのだと話す。普段本なんか読まないし図書館の雰囲気も好きじゃないけれど漫画でも読んで暇をつぶそうかと思って中に入ったら偶然にも私達と居合わせたと。

「なんで醍醐と一緒なの?」
「え、勉強教えてもらってるから」
「真麻勉強できるし。中学最後の貴重な夏休みを醍醐と一緒にいて楽しい?」

 余計なお世話。
 喉元寸前までこみ上げてきた言葉をぐっと飲み込んで押さえ込むと、なぜか私の前に大里くんが座った。

「ははあ、大方弱味でも握られてるんだろ?」
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