重ねた嘘、募る思い
脳筋のはずの大里くんは意外にも勘ぐるのは得意なようで、醍醐くんの肩が小さく跳ねた。
それを見た大里くんがしめたとばかりにほくそ笑む。
「ふーん。ここでふたりを見たこと黙っててやるよ。その代わり俺の願いも聞いてくれるよね、真麻」
え、なんで私が大里くんの願いを聞くの?
そう思ったけど言葉にならずに首を傾げていると、大里くんが机に肘をついて手背に顎を乗せ、にまあっと不敵な笑みを浮かべた。
黙っていればかっこいいと思うけど、言うことはいちいち幼稚だと思う。
「口止め料として俺とつきあって」
「はあっ?」
裏返った私の声が響く。
いくら会話をしていい席でもさすがに大きな声は図書館では厳禁だろう。周りの視線が痛くて手で口を塞いで何度も頭を下げた。
私に大声を出させた大里くんはどこ吹く風でひょうひょうとしている。
なんで私が口止め料を払う必要があるのかさっぱりわからないし、男子とつきあう気なんて全くないからいつも通り断ろうとした時、はっとした。
もしかして大里くんは私が醍醐くんに弱味を握られていて、渋々一緒にいると勘違いしているのかもしれない。
だから一緒にいるのを黙っていてほしいと私が思っていると思いこんでいるのでは。