重ねた嘘、募る思い
「創ちゃんを返してください……ひくっ、お願い、します」
たまたま大里くんがいない下校途中、呼び止められていきなり泣き出したのは一年の女子だった。
同じ学校の生徒が興味津々の目で見ながら通り過ぎてゆくのがわかってすごく心苦しい。
しょうがなく人目のつかなそうな公園の中に連れ込むと、その子は更に泣きしゃっくりをあげはじめた。別に意地悪しようとしているわけでもないのにと思ったら困惑と苛立ちが混じり合う。
創ちゃんが大里くんのことだとすぐにわかった。
話を聞けばこの子は大里くんの幼馴染で、小さい頃によく遊んでもらっていたという。幼い頃結婚の約束もしていると。だから返せと必死に私に訴えかけているのだった。
幼い頃の約束というのを目の前の女の子がとても大事に思っていることは伝わってきた。大里くんが覚えているかはわからないけれど。
こっそり大里くんにヘルプメールを送信すると彼はすぐに飛んできた。
その姿を確認した彼女は大里くんの胸に飛びついてわんわん泣きだす始末。
やっぱり私がいじめたかのように思えてとっても居心地が悪かった。
大里くんがどんな反応を示すかと思ったら、その子を宥めるように頭を優しく撫で続ける。
ばつの悪そうな視線が私に向けられてこの関係の終わりを悟った。