重ねた嘘、募る思い
私も大里くんもお互い何も言わなかった。いわゆる自然消滅。
ただ私の悪い噂だけがまことしやかに囁かれた。特に下級生達に。
そして私達が別れたという噂が流れてまたいろんな男子に声をかけられるようになった。
そして女子達の間では私が大里くんを弄んだという結論に至ったらしく、更に私の評判は悪くなった。好きでもない男子とつきあっていたツケだろう。
まあそれでも構わない。私は自分が仲良くしたい人にだけ好かれればいいと思う方だったから。
そう思った時、とある視線を感じた。
醍醐くんが軽蔑の眼差しで私を見つめている。
夏休みから一度も言葉を交わしていない。
ただ醍醐くんが私へ向ける視線はいつも冷ややかなものだった。
夏休み中、私は何度か醍醐くんへメールを送っていた。
意味をなさない、タイトルも本文もないただの空メールを。
醍醐くんはそれを嫌がらせと取ったのかもしれない。もちろん嫌がらせではない。なにを書いたらいいかわからなかっただけ。そんなメールの返信が来るわけがない。
数日後、私のメールは彼の元へ届かなくなっていた。
たぶんメールアドレスを変えたのだろう。
電話番号も知っているのだからかければいいだけだと心では思っていても、いざ通話のボタンを押すことができなくて。
気がついたら、目の前に醍醐くんの姿はなくなっていた。