重ねた嘘、募る思い
喉のずっと奥、胸の上辺りがもわっとした感覚に襲われる。
痛いんじゃない、詰まるような感じに思わず小さく声が出そうだった。
お願いだからそんな顔をしないで、心の中ではいくらでも言えるのに声にはなってくれない。
「何か、用?」
さも苛立ちを隠せないといった感じで足先で雑草を軽くかき分けるようにする醍醐くんにかちんときた。
なんでそんな態度をとり続けるのだろうか。
私の空メールが悪かったのかもしれない。だけど半年も根に持つようなことなのだろうか。今からその謝罪をしようとしているとは思わないのだろうか。
まあ醍醐くんの今の態度でする気はなくなったけれど。
「べっ、別に」
「僕を呼び出したのは君じゃないんだ。じゃあ他行ってくれないかな」
学ランのポケットから私が下駄箱に入れたメモを取りだし、これ見よがしにひらひらさせる醍醐くんの口角がくっと持ち上がってそれにもまたイラっと来た。
それなのに黒縁眼鏡の奥に潜むガラス玉のように澄んだ瞳が私を捉えるから思わずぐっと息を呑み込んでしまう。
そんな私の変化に気づいたのかわからないけど、目頭に力を込めた醍醐くんが持っていた本にふいっと視線を落とした。
私となんか話すことはない。
そんなオーラがびしびし伝わってくる。