重ねた嘘、募る思い
「あの、さ。のんの、どこが好きなの?」
「は?」
勢いよく振り上げた必死な形相が私を射るように睨みつけた。
自分より身長の高い醍醐くんに上目遣いされ、怖い反面ドキッとするような色気を感じてしまったんだけど。
そんな気持ちを悟られまいと、私も負けじと(勝負でもないのに)睨み返していた。
「それ、聞いてなかったから」
「何度も聞かれたけど」
「答え聞いてなかったから」
なんでそんなことを今更と言わんばかりの忌々しそうな大きなため息が落とされる。
まるで足下に落ちている木の葉まで舞い上がってしまうんじゃないかと思うくらいの大きなもの。
ずっと疑問だった。
醍醐くんと花音はなんの接点もないはず。
それなのに窓際の一番前の席の花音の背中を廊下側の一番後ろの席の醍醐くんはいつも見つめていた。そしてそのふたりの間の席が私で。
「自分を持っているから」
ぼそっと醍醐くんの口から漏れた小さな声を聞き逃しそうになった。
だけど寸での処で私はその言葉を拾い上げていた。
「誰とも群れない、媚びない強さがあると思った」
耳まで真っ赤なのに下を向いてそう言った醍醐くんの目はひどく冷静なものに見えた。