重ねた嘘、募る思い
確かに花音はひとりでいることが多いし、仲のいい特定の友達がいる訳じゃない。
確かに醍醐くんの言うとおりなのかもしれない。だけどそれは私に対するあてつけの言葉のように聞こえた。
「のん……一時期、彼氏いたじゃない」
「へえ、あれをつきあってると思ったんだ。藤城さんって案外長田さんのことなんにもわかってないんだね」
「醍醐くんにのんのなにがわかるの? 話しかける勇気もないくせに」
売り言葉に買い言葉で、無意識に返していた。
私が一番のんをわかっているはず。だって一緒に育ってきてずっとそばにいたんだから。それなのにそんなふうに言われて腹が立った。
顎を僅かにあげ、斜に構えた状態で私を見下ろした醍醐くんがすっと視線を逸らして私が来た道の方へ向かってゆく。
まるでこれ以上話すことはないと言われたかのようで、痛いくらいの寂しさを覚えた。
「話の途中で逃げるの?」
「これ以上話すことなんかない」
「のんにっ、言っちゃうから!」
ぎしりと醍醐くんが踏みしめた草が音をたてた。
さすがに私の言葉の重みを感じたのか、醍醐くんの歩みが止まってゆっくりとこっちを振り返る様はスローモーションのように見え、記憶の深いところで根強く残っている。