重ねた嘘、募る思い
「――!」
言葉が出なかった。
なんの感情も含まないガラス玉のように澄んだ瞳が極限まで細められている。
「あんたみたいな女、一番嫌い」
吐き捨てるようにたたきつけられたその言葉の意味を自分の中で何度も反芻した。
醍醐くんの姿が視界からなくなってからもずっと。
醍醐くんから向けられた感情の固まりは確実に私を嫌悪するものだったし、これ以上構ってくれるなといった明確なサインだった。
冷たい風が私の頬を撫でる。
流れ落ちた涙はそれのせいですぐに冷たくなった。
私は何を間違えていたのだろうか。
花音を醍醐くんに取られるのがいやだったんじゃない。その逆だった。
花音に醍醐くんを取られるのがいやだった。
私がほしかったのは……
ようやく気づいた時にはなにもかもが遅かった。
***
すでに願書を出してしまった高校は醍醐くんと同じ学校。
第一志望だから蹴るわけにもいかず、同じ高校に通うことになった。
そして中学の卒業式の日。
花音が思いを寄せてつきあっていたと思い込んでいた男子から告白された。
「長田に協力してもらって藤城と近づきたかっただけでつきあってなんかないから」
ヘラヘラと言うその男子にムカッ腹が立った。
何に対して弁解しているのかも花音の想いを知ってか知らずかわからないけど結果的に弄んだことも何もかも許せなかった。
それよりなにより、私より醍醐くんのほうが花音のことをわかっていたことに少なからずショックを受けた。