重ねた嘘、募る思い

4.そして現在


「たっだいま……」

 時間は二十二時過ぎ。今日は遅番だった。
 私が働いている第一外科病棟には早番はなくて八時半から十七時、中番と呼ばれているシフトは定時の八時半から十九時半。日勤には遅番という勤務もあり、十時から二十一時までになっている。
 基本遅番はフリー業務と呼ばれる部屋持ち看護師のフォローに回るから病棟内の患者さんの状態をある程度把握しておかなければならない。新人ナースの私にとっては荷の重い一番嫌いな勤務だ。疲れも普通の勤務の倍は感じる。

 今日は母が夜勤だから花音の家で夕食を食べることになっている。
 パンパンに浮腫んだ足からブーツを脱ぐのは至難の業だ。
 その足を引きずるようにしてようやくリビングへ向かう。

「おなか空いた……」

 なんとかリビングを通り過ぎ、キッチンへつながるのれんを押し上げるとすでに四つの席は埋まっていた。
 パパとママ(注:花音の両親)が仲良さそうに隣同士、その向かいに座っているのは花音とその彼氏の陽。
 いつも私が座るポジションにちゃっかりと陽がおさまっているではないか。しかも取り囲んでいるのは鍋。

「真麻お帰り。ごめん、先食べ始めちゃった」
「お疲れさま、真麻」

 ママとパパがにこやかにそう告げる。

「真麻ちゃんごめん、僕おなか減っちゃって待ってられなかった」
「うん、わたしも……ごめん」

 いたずらっ子みたいな笑みを向けたのは陽。
 それに同調する花音。まるで陽を庇うかのように。
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