重ねた嘘、募る思い

「今日って何かの記念日なの?」
「そうじゃないけど、つきあって二ヶ月近く経つし、そろそろいいかなあと思って」
「そろそろいいかなって、まさか結婚?」

 陽の発言につい声をせり上げてしまった。
 あまりにも突然のことで心がついていかなかったのが事実。

「を、念頭に置いてるってことで」
「約束の意味でくれたのよね、陽くんは。お父さんもお母さんも陽くんみたいな息子ができるならいつでも大歓迎よ」

 ありがとうございますと繰り返しながらパパとママのグラスにビールを注ぐ陽をうれしそうな目で見つめる花音。
 あーあ、長田家は今全員幸せの絶頂のようだ。
 なんだか私ひとりだけ取り残された気分なんですがー。

 膝がズキズキする。
 数日前の私だったら手放しで祝福できていたはずなのに。

 今日の日中、申し送りノートに挟まれたプリントを見たせいだ。
 そこには来週の月曜から医学生がポリクリでナースステーション内に立ち入ることが書かれていた。
 その中に見つけた名前。

 ――醍醐一真。

 醍醐くんが、私の働く病棟に医学生として来る。
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