重ねた嘘、募る思い
その日はフリー番で忙しく病棟内を駆け回っていた。
清拭に洗髪、第二外科病棟が埋まっていて急遽うちの病棟へ転棟してきた整形外科の患者さんのリハビリのお迎えやらなんやら。
「真麻、二号室の高丸さん点滴漏れてるみたいだって」
リネン室でシーツを引っ張り出してると看護助手の綾音が教えてくれた。
綾音は私と同い年で私より先にこの病棟で働いている先輩で、職種は違うけど仲の良い友達でもある。
「え、なんでわかるの?」
「学生さんに言われたの。看護師さん呼んできてって」
こういう時は部屋持ちナースに伝えることになっているけど、ベテランの綾音がそうしないってことは不在なんだろう。だからフリー番の私に伝えたってわけ。
「んーわかった。じゃこっちお願いできる。五号室」
「了解」
五号室の患者さんが布団にお茶をこぼしたとナースコールしてきたので替えようと思っていたところだった。
シーツ交換はひとりだと時間がかかるから、綾音を呼んで一緒にやってもらおうと思っていた矢先の出来事。
シーツ交換や洗髪、清拭などははっきり言うと看護助手さんの方が上手だ。
私達みたいに学校で習ってくるわけでもないのに(講習はあると言っていたけど)何度も経験しているからかその腕はプロ並だったりする。