重ねた嘘、募る思い
「真麻と同じ大学に通ってるなんて知らなかったよ。昔から勉強できたもんね」
「……うん」
「昔の醍醐くんの印象ってあまりないんだけど、真面目な感じのなかなかの好青年だったよ」
――ずきん、と胸の辺りに鈍い痛みを感じた。
「あ、わたしが印象ないって言うのもおかしいよね。きっとわたしのほうが印象ないだろうし……あれ、じゃあなんでわたしのことわかったのかなあ」
――ずきん、ずきん、とそれが広がってゆく。
「きっと真麻の従姉妹だって知ってたからだよね」
――そんなんじゃ、ない。
こんなこと醍醐くんが聞いたらどんな気持ちになるだろうか。
それはもちろん花音のせいではない。きっと醍醐くんは自分がアプローチしなかったからだって思うかもしれない。
だけど、私は。
私だけは醍醐くんの本当の気持ちを知っているから。
「のんは、なんにもわかってないんだね」
「え?」
「なんでもない、こっちの話」
醍醐くんの気持ち、花音にとってどうでもいいものなら私にちょうだい。
そんな風に思ってしまった私は本当にバカだと思う。
そしてそんな台詞が口をついて出そうになった瞬間、言いようもない焦燥感が頭をもたげた。
私はいまだ醍醐くんへの気持ちを忘れられずにいるってことを気づかされた瞬間だった。