重ねた嘘、募る思い
医局のシャワー室を借りることができ、汗を流して白衣に着替えた。
いつの間にか私のトレンチコートが脱衣所に戻ってきていてびっくりする。誰がここに持ってきてくれたんだろう。
醍醐くんに投げたはずの携帯もポケットに入っていた。
冷静になってから気づくことってたくさんあると思う。
履歴に青野先生の番号があると聞いて、醍醐くんはそこからかけてくれたのだろう。
そしてこの青野先生の着信履歴の多さを見てどう思ったのか不安になる。
画面をスクロールするとほぼ全画面青野先生の名前。
これだけ青野先生の名前が並んでいたらつき合っていると思われているかもしれないな。
まあ、しょうがないよね。
その前になんとも思われてないのに。なんて自意識過剰なんだろう。
よく考えれば、なんとも思われていないって嫌いよりも一番どうでもいい感情だよね。その人の意識下にすらないのだから。
なんで私は好きになってくれる人を好きになれないんだろうか。
自分のことなんてなんとも思っていない人しか好きになれないなんて、幸せな未来が全く想像できない。
馬乗りになって地面についていた膝に今頃じわじわと痛みを感じていた。