重ねた嘘、募る思い
「真麻、醍醐くんstatline好きなんだって」
「へぇ」
そんなことを話していたのかと興味なさげに返事すると、花音が鞄をごそごそと漁りだした。
「これ来月のライブのチケットなんだけど、真麻と醍醐くんで行ってくれない?」
「はあっ?」
目の前に差し出されたのはチケットセンターの封筒。
「わたしと陽さんの取った日にちが被っちゃって……今回真麻先行予約間に合わなかったじゃない。だからよかったら」
なんでそうなるの?
困惑顔の醍醐くんが私を見ている。私だって同じ気持ちだよ!
「でも……」
躊躇いがちに醍醐くんが花音に問いかけるけど、お願いって手のひらを合わされて口ごもってる。
日付を見るけどその日のシフトがどうだったか今すぐにはわからない。
「夜なら問題ないけど……」
私が持っているチケットを見て醍醐くんが言った言葉に唖然とした。
なにかしら理由をつけて断ると思っていたのに。意外。
「僕が行っていいのかな」
醍醐くんの視線が高いところから私に向けられているのに気づく。
なにそれ、私がダメって言ってるみたいな口振りじゃない。
「うん、好きな人に行ってもらうのが一番だから」
「いや、そういう意味じゃなくて……」
「わかった、行くよ」
何か言いたそうな醍醐くんにイラっと来てはっきり言い切ってやった。
うれしそうな花音を後目に微妙な面もちの醍醐くん。
相手が私じゃ不服なのかもしれないけれど、今回は我慢してもらうしかない。