重ねた嘘、募る思い
 
 花音が帰って行った後、その日の待ち合わせを決めたりするのに醍醐くんと連絡先を交換することになったんだけど、その時一悶着あった。

「アドレスも番号も昔から変わってないけど」
「え?」
「案外薄情なんだ。あ、藤城さんは変わってるよね」

 ニヤッと意地悪そうな笑みを向ける醍醐くん。
 じゃあ昔送った空メールが届かなくなっていたのはなんでだろう。
 迷惑だったからメールアドレスを変えたと思っていたのに。
 まさかあの時自分の携帯から削除したアドレスのまま変わっていなかったとは思わなかったから、そう言われたらなにも言い返せない。 

 去って行く醍醐くんの背中を見送る。
 風に揺れる柳の木のような歩き方は全く変わっていないんだね。

 あの時、醍醐くんに『嫌い』と言われ、去って行かれたことを思い出して少しだけ切なくなってしまった。
 あれからすでに七年の時が経とうとしている。
 そろそろこの思いに終止符を打たないといつまで経っても前へ進めない気がした。

 私はこれを機に醍醐くんへの思いから卒業することに決めた。
< 174 / 203 >

この作品をシェア

pagetop