重ねた嘘、募る思い
騒ぎがさらにヒートアップする中、いきなり会場の電気が消えてステージにスポットライトが当てられた。
メンバーが駆け足でステージに戻ってくると会場中に絶叫の渦が巻き起こる。
私も我を忘れて叫んでいた。
紘くんが口元に指を当ててしーっと言うと、ざわめきが一気に引いて静かになっていく。
メンバーが「ありがとう」と何度も繰り返す中、急に紘くんが一歩前へ出た。
「突然ですが、宮内紘基は今日結婚しました」
――え?
紘くんのいきなりの結婚宣言に会場が割れんばかりの騒ぎになった。
そりゃそうだよね。一番人気の紘くんが誰かのものになってしまうなんて考えたくもないよ。
他のメンバー三人が紘くんをはやし立てるように口笛を吹いたり、背中を叩いたりしている。照れくさそうな紘くんの笑顔がモニターいっぱいに映し出され、どこからともなく「おめでとう」の声があがる。
「このツアーの最終日、つまり今日ファンのみなさまに報告しようと思っていました。プロポーズするために作った曲を披露させてください」
スツールが一個用意されてそこに紘くんが座り、その周りを囲うようにして三人が立っている。
よく見えないけど、紘くんが持っているのはギタレレのようだ。
他のメンバーはベースの水っちがハーモニカ、ドラムの泰三くんがスタンド式のボンゴ、キーボードの村べえはなんとピアニカだ。
紘くんが振り返ってみんなの顔を見ながらうなずいてこっちに向き直る。
「今日が新たなスタートラインです。それでは聞いてください。重ねた嘘、募る思い」