重ねた嘘、募る思い

 紘くんのギタレレがスローリーなリズムを刻み、村べえのピアニカが主旋律を奏でる。
 タイトルを聞いてなぜだか全身に力が入った。
 みんなの手拍子が紘くんの歌声をもり立ててゆく。誰もが初めて聴く曲なのに当たり前のように広がるハミング。すごい臨場感。
 サビはストレートに思いを伝えるのではなく、どれだけ相手を愛しているのか遠まわしに訴えかける紘くんの心の内が伝わってくるものだった。


  重ねた嘘の分だけ募る君への想い
  自分を偽るだけならよかったのに多くの痛みを伴った
  まだ告げてない本当もあるけれど 
  墓までもってはいかないよ

  僕の息が途絶える直前
  全部君へ預けていくから

  僕の想いも君の想いも全部全部
  僕らふたりだけのもの
  ふたつの道を重ね合わせよう

  この意味がどうかどうか君に伝わりますように


 曲が終わった後の一瞬の静寂。
 そして割れんばかりの声援と拍手に圧倒された。


 なんでだろう。幸せな歌なはずなのにすごく泣きたくなった。

「いい歌だね」

 立ち上がってステージを見つめながら醍醐くんがそうつぶやく。
 それにまた泣きたくなってしまった。
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