重ねた嘘、募る思い

「ごめん、つい呼び止めちゃったけど」

 ニット帽を脱ぎ、マスクの隙間から口元を覗かせた陽を見て醍醐くんが大きく息を呑んだのがわかった。
 目をこれでもかと見開いて陽をじっと見つめている。
 あ、これはまずい。もしかして勘違いしているかも。

「え、宮内……」
「違う違う、この人はそっくりさん」
「そっくりさんって……!」

 気づかれないと思って脱いだのにとぶつぶつ言いながら陽がニット帽を被り直す。
 やはり醍醐くんは紘くんと陽を間違えていたようで、一瞬間を空けてから「あ、ああ」と惚けたような声を漏らした。
 まあこれだけ似てるし間違いもするよね。私だって初めての時は目を疑ったもん。
 
「えっと、真麻ちゃんの?」
「違うから」

 陽の興味津々顔がなにを言いたいのかすぐにわかって止める。
 そうなんだ、とややにやにやした陽が醍醐くんに向かって頭を下げ、自己紹介をしはじめた。

「太陽の陽一文字で『ヨウ』って言います」

 それを聞いた醍醐くんが「ヨウ」と小さくつぶやきながら何かを考えているように見えた。

「お待たせ、あ、真麻と醍醐くん」

 そこにタイミング良く花音が戻ってきて合流した。
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