重ねた嘘、募る思い

 今日の花音はタータンチェックのロングスカートとショートブーツ、白のポンチョ型のコートで甘い雰囲気を醸し出している。
 陽とつき合うようになって花音はおしゃれになった感じがする。
 服のテイスト自体は変わっていないけど、地味目の色のものが多かったのに今は結構パステル調の服も好んで着ている。とってもいい傾向だと思う。 

「こんな人混みだし、まさか真麻達に会えるとは思わなかった」
「僕が真麻ちゃんを見つけて声かけちゃったんだ」

 吸い寄せられるように花音が陽に近づいて行く。
 そして当たり前なんだけど陽も花音に寄り添って自然に手を差し伸べる。そこだけ甘い空気が漂っているようだ。
 ふたりでいる姿が様になってきたと思う。それは心からうれしい。
 だけどひとりだけそう思っていない人がいる、はず。

 私のとなりにいる醍醐くんにばれないようちらっと顔を見上げると、なんとなく苦笑しているように見えた。
 そんなことに気づかない花音と陽はまるで私達がいることすら忘れているんじゃないかと思うくらいふたりの世界に入っている。
 まるで砂糖をたらふく食べさせられてるみたい。甘すぎるわ。

 醍醐くんは今、何を考えているのだろうか。
 そればかりが気になってしまう。
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