重ねた嘘、募る思い

「醍醐くんになにを言ったの?」
「さあ、彼に聞いてみれば。というかまだ聞かされてなかったのが驚きだけどね。彼も相当な意地っ張りなんだねえ。君らいい勝負だよ」
「まじめな話をしてんの!」
「こっちだって至ってまじめ。藤城には世話になったからね。同期のよしみだけどもう俺の管轄外。あとは自分らでうまくやってくれよ」
「ちょっ、先生!」
「俺はそんなに暇じゃないの、じゃあね。あ、あとで回診介助よろしくね」

 背中を押され、医局から放り出された。
 なんなのよ、いったい!

 全く状況はわからないけれど、醍醐くんと青野先生に医学生と医師という関係とは別の関わりがあるのはなんとなく理解した。
 だけどどうこじれたら私と青野先生が結婚とかの話に……って!

 ――あの時、醍醐くんが私の携帯を見たから?

 私の携帯の着信履歴が青野先生からのものだらけでつき合ってると勘違いされてもおかしくないけど、結婚まで発展するのはおかしい。

 やっぱり青野先生が醍醐くんによっぽど変なことを吹き込んだんだろう。
 恩を仇で返すなんてなんて人なんだろうか。
 周りに人の気配がないのを確認してから、私はその場で地団駄を踏んだ。
 
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