重ねた嘘、募る思い
五月に入ると十八時近くても空はまだ明るい。
連れてこられたのは病院の近くにある公園で、毎年春に動ける患者さん数名とここにお花見をしに来る。そのくらい近い距離。
すでに桜は散って緑色の木々が生い茂り、風が吹くたびにその香りが伝わってくる。
二つ並んだベンチに座った醍醐くんを見て、どっちに座ったらいいのか悩んだ。隣だと距離が近い気もするし、かといってもう一つのベンチじゃ距離が離れすぎてる。
二の足を踏んでいたら上目遣いで見つめられ、空いた左隣のスペースにちらっと視線を落とす。
なんとなくどういった態度をとっていいのかわからなくなって、結んだあとが残る髪を掻くふりをして醍醐くんの左隣に座った。
「……」
「……」
なにこの沈黙!
醍醐くんは自分の太腿に両肘をついて前屈みになり、静かに流れ続ける噴水を見つめている。その表情を窺い知ることはできないけれど、もしかしたらタイミングを見計らっているのかもしれない。
私も話したいことがあったし、こっちから振ればもしかしたら話しやすいのかも。
「醍醐く」
「あのさ」
お互いの言葉だけが絡み合ってしまった。
醍醐くんは前を向いたまま、私はその左斜めから見える横顔を見ながら。
「なに?」
僅かにこっちを向いた醍醐くんの顔が真っ赤になっているように見えた。夕日のせいなんだろうけど。
「私も話があって」
「……どうぞ」
「え、先に話していいの?」
「……やっぱり僕から話す」
急に声のトーンが小さくなって、語尾の方は口元でもごもごとくぐもり、再び前に向き直ってしまった。