重ねた嘘、募る思い

 お昼はキャラクターの絵柄の入ったバンズのハンバーガーセットを食べた。
 わたしと真麻が並んで、その前に陽さんが座る。
 そこでも話すのはそのふたりだった。話を振られても、やっぱり曖昧にうなずくだけ。
 わたしがここにいたら場を盛り下げるだけってわかっていた。だから食べるのに集中した。
 ふたりが話しかけてきても食べてて聞いてませんでしたっていうのを装えばいい。そう思って必死で食べてた。ただの食い意地のはった女だ。

 聞いているだけでも陽さんの話は面白かった。
 なるべく自然に笑いを混ぜ、いかにも加わっているかのように振舞う。もしかして邪魔かもしれないけど、場を白けさせたくなくて必死だった。

 本当はわかってる。
 そんなことをしなくたって陽さんはわたしを気にしてなんかいない。
 真麻がいればそれでいいはず。ここにいるのが申し訳ないくらいだった。

 食べたものがなぜか喉元でしょっぱく感じたのはなんとか涙を堪えていたからかもしれない。
 寒いからと何度もティッシュで鼻をおさえながらずれた眼鏡を直すふりをしていた。なるべくオーバーに動かないように心掛けて。

 楽しそうに笑い合うふたりの会話の邪魔をするのだけはいやだったから。
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