重ねた嘘、募る思い

「いっぱい聞きたいことがあって……どれからにしようか迷うんだけど、とりあえずあれは取り消したい」
「あれ?」
「この前の帰り際、言ったこと」

 お幸せに、のことだろうか。
 そうだ、そのことを私は一番聞きたかったんだ。

「藤城さんって本当に男運ないんだね……」
「は?」
「危なっかしくて見てられない。男を見る目がないと言うか……好意を向けてくれる人とつき合うのはいいけど、ちょっと考えなしって言うか」

 苛立ちを抑えているのか、ぶつぶつとつぶやくように淡々と言葉を投げつける醍醐くん。
 最後には掠れた声で「まったく」とあきれたようにつけ足された。

 なんだかボロクソ言われているような気がするのですが?
 しかも男運ないとかなんでそんなこと知ってるわけ?
 急に多弁になる醍醐くんの後ろ頭を凝視しているとわしゃわしゃと髪をかき乱しはじめた。

「自分を好きになってくれる相手なら誰でもいいの?」

 醍醐くんのその言葉が、鋭利なナイフのように変化して私の胸を抉った。
 それでも私のほうを見ようともしない醍醐くんが何を考えてそういう言葉をぶつけてくるのか全く理解できなかった。

 痛い、痛い。胸が痛いよ。
 違うもん、そうじゃない。
 私は私を思ってくれない人が好きで、それがあなただってこと気づいてないからそんなひどいことが言えるんだ。

 そう言いたいのに、喉の奥が焼け付くようにひりひりして言葉にならない。

「だったら、僕でもいいはずだ」
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