重ねた嘘、募る思い

11.重ねた嘘、募る思い


 醍醐くんが今、なにを言っているのか全く理解できなかった。
 僕でもいいって、何が?
 肝心の醍醐くんは身動き一つせずに噴水のほうを見つめたまま。
 たださっきは気づかなかったけど、耳まで真っ赤になっているように見えるのはわずかな変化なのかもしれない。

「どういう、こと?」
「……」

 聞き返すけど、醍醐くんは前を向いたまま何も言わない。
 私はなぜか薄ら笑いを浮かべてしまっていた。
 だって醍醐くんが言ってることは明らかに変なんだもん。

「今の話の流れだと、まるで醍醐くんが私のこと好きって言ってるみたいに聞こえちゃうよ」

 勘違いも甚だしいと笑うのをやめ、自分の心をいなす。
 あり得ない。大嫌いと言われてそんな風に思うことすらおこがましい。

「醍醐くんって言い間違いもするんだね。知らなかった……人間だもんね。アハハ」

 なぜか言葉が止まらない。
 今度は自分が異様に多弁になっていることがわかるけど、言葉を発していないと都合のいい方に考えてしまう思考を止めることができなくなりそうで怖かった。
 おかしくもないのにわざとらしい笑いを混ぜたりして。

「……腹立つ」
「え?」
「なんで人の気持ちを茶化すんだよ。迷惑かもしれないけど、そんなふうに笑われて傷つくと思わないのかよ!」
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