重ねた嘘、募る思い
「藤城さん、いい看護師になったんだね」
「なに? 急に」
「受け持った高丸さんも言ってた。藤城さんはいつも明るくて話しやすいって。自分の息子さんが独身だったら嫁に来てほしかったって」
なんだか照れくさい。
息子や孫の嫁にというのはたまに言われるけど、社交辞令だとばかり思っているからいつも聞き流している。だけど今日ばかりはまともに受け取ってしまうくらいうれしかった。
「道で倒れた女の人を助けた時も本当にかっこよかった。なんだかすごく輝いて見えたよ」
「本当?」
それはすごくうれしいかも。
病院で働く母親がキラキラ輝いて見えて、私も看護師になりたいと思った理由のひとつだったから。
「藤城さんが必死で心マしているのに『代わる』ってなかなか言い出せなくてごめん。その後、青野先生に連れて行かれる君を見て、正直妬けた」
「……」
やっぱりあの時『代わる』と声かけてくれたのは醍醐くんだった。
実際代わってはもらえなかったけど、その気持ちだけは本当にうれしかったんだ。
「正直に想いを伝えることができてよかった。聞いてくれてありがとう」
すっと立ち上がった醍醐くんが私に深々と頭を下げた。
「じゃ、お元気で」