重ねた嘘、募る思い
真麻こと藤城真麻とわたし、長田花音は隣に住んでいる従姉妹同士。
わたしの母の兄が真麻の父親で、しかも父同士も母同士も友人という不思議な関係。
同い年のわたし達は姉妹のように育てられてきた。お互いひとりっ子だし、ずっと仲良く育ってきた。
真麻はわたしの両親をパパママと呼ぶ。第二の両親という意味を込めているらしい。わたしは真麻の両親を伯父さん伯母さんと呼んでいる(さすがにパパママは恥ずかしいから)
成績優秀で運動神経もよく、美人の真麻の比較対象にしかなりえないとわたしが気づいたのは中学に入った頃だった。
真麻はその頃から急激にモテるようになり、いつでも隣には男子生徒がいた。
一方わたしは男の子に話しかけられるだけで恥ずかしいくらい頬が真っ赤になってしまうどうしようもない体質だった。
別に意識しているつもりはないのだけど、すぐに真っ赤になってしまうので『自意識過剰』と陰口を叩かれたこともある。
わたしみたいな眼鏡ブスなんか相手にしないとか名前負けだと聞こえよがしに言われたこともあって、それから男子が苦手になった。
そんなわたしの心情を知ってか知らずかは不明だけど、真麻との仲を取り持つように声をかけられたことが何度もある。はっきり言えば迷惑なのだがそんなこと声に出して言えないわたしは協力するしかなかった。
それにちょっといいなと思っていた男子からの協力要請だったりすると無碍にもできない。少しでも接点を持てたことがうれしかったりして。
男子から声をかけられるわたしを見て、真麻はわたしに彼氏ができたと思っていたらしい。
いい傾向だと思い、暖かい眼差しで見守っていたという。
なんて勘違いをしてくれたんだ、と真麻を恨んでもお門違い。真麻に思いを寄せる男子にそのことを伝えると、あっけなく突き放される羽目になる。
真麻は「別れたの?」だなんて悪びれずに聞いてくるし、別れるもなにもつき合ってなんかないと何度も言おうと思った。だけどわずかなプライドが邪魔して言い出せなかった。
そんな学生時代を過ごしてきたわたし達は現在二十二歳。
真麻は国立大学の看護学科を卒業し、付属病院の外科病棟ナース一年目。
わたしは短大を出て、出版販売会社のOL三年目。ようやく仕事もそれなりに任されてきたってところ。