重ねた嘘、募る思い

 二十時からその日最大のイルミネーションパレードが行われると聞いて、場所取りをすることにした。
 陽さんはそういう情報をよく知っているようで、いいポジションを教えてくれた。だけどパレードまでまだ三十分以上時間があるし、じっとしてたら寒くなってきた。真麻も寒さを逃そうと足踏みをしている。

「ちょっとトイレ行ってくる。のんは?」
「わたしは平気」

 そう言ってからしまったと思った。
 一緒に行っておけばよかった。なんでわざわざ陽さんとふたりきりになってしまうコースを自分で選んでしまったかなあ。
 だけど今更行くって言うのも不自然だ。そんなことを考えているうちに真麻の姿は見えなくなっていた。
 落ち着かずキョロキョロ周りを見ていると、同じく場所取りをしている隣のカップルがいい感じに肩を組んで、キッ! キスしてるっ。
 慌てて目を逸らすと陽さんと視線が合った。そっちも慌てて逸らして結局下を向くしかなかった。

「ノブちゃんはおとなしいんだね」
「……いえ」

 それ以上会話が続かない。
 真麻に話す時はとっても楽しそうな陽さんが口ごもっている。

 わたしのせいだ。
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