重ねた嘘、募る思い

 気持ちが高ぶっていて少しでも離れたくなかった。
 今まで離れていた時間を今すぐにでも埋めたくて、私はそのまま醍醐くんの家へ来てしまった。
 
 ついた頃には十九時を過ぎていて、外は真っ暗になっていた。
 普段は慎重派なほうだと思うのに、いきなり大胆な行動に出てしまったものの醍醐くんもすんなり受け入れてくれてホッとした。
 ワンルームだけど一人暮らしにしては広いしきれい。
 窓際に置かれたベッドと勉強机、テレビにローソファ。キャビネットの上はきちんと片づいていて彩りはモノクロ。本棚は医学書だらけ。イメージ通りの部屋だった。

 順番にシャワーを浴びて、言葉も交わさずに抱き合った。
 初めて感じる醍醐くんの温もりに胸が熱くなる。
 私の身体に触れる手つきは拙いけれどひどく優しくて。胸に触れた時は少しだけ力が込められていて、全身で驚いてしまった。
 そんな私の変化を見抜いた醍醐くんが小さな声で「ごめん」と謝るのがくすぐったいような感情をじわりと生み出してゆく。

 胸のどきどきが止まらない。
 だけどもっともっと触れて抱きしめてほしいと願ってしまう。
 額から頬、唇に口づけられた後、首筋をすうっとなぞるように舐めあげられたら信じられないくらい甘い声を漏らしてしまっていた。
 とろけそうになるくらい高みに持ち上げられ、ふわふわした感覚の中、醍醐くんの身体が少し離れただけで寂しい気持ちになってしまう。
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