重ねた嘘、募る思い
「ねえ、早く戻ってきて」
真っ暗な部屋で手を伸ばす。
思わず発してしてしまった言葉はきっと冷静になった時すごく恥ずかしいはず。
だけど今はそんなこと全く気にならなくて、ただただ醍醐くんに触れたくて必死だった。
電気をつけないでほしいという私の希望を叶えてもらったのに、暗闇に飲み込まれそうでなんとなく怖かった。
耳元で「おまたせ」と囁かれ、触れた唇に熱を持つ。
抱きしめてと哀願すれば、宥めるようにしっかりと包み込んでくれた。
そして。
「……痛っ」
「え?」
「ね、そこ……場所違う?」
「僕、産婦人科医の息子だよ。解剖生理も勉強してるし」
「だって、痛いぃ」
「まさかとは思うけど、藤城さん……初めて、とか?」
――ぎく。
固まった私を見つめる醍醐くんの目がぱちくりと瞬きを繰り返す。
身体をまっぷたつに裂かれるような痛みと気まずさで私は顔を歪ませていた。
「ずっと彼氏いたじゃないか」
「だって!」
「拒み続けてたの?」
「ちがっ」
記念日に初めてをとこだわり続けた私は、自分の誕生日が来たらとか彼の誕生日にねと約束をしていた。
どうもそれを待てないような人ばかりつき合っていたようで、結局はいつも最後に『ヤらせてくれない』という理由で浮気されたのだった。
それでもみんな謝ってくれて『やり直そう』と言ってくれるのだけど、私の気持ちは冷え切って別れを選んでしまっていた。
つまり過去の男性とうまくいかなかったのには自分に原因があると思う。