重ねた嘘、募る思い

 駅について、改札に入った頃コートのポケットの中の携帯が震えた。
 画面を見ると真麻からの電話だった。
 はあ、と突如出たため息が白い。出なきゃまずいだろう。意を決して通話にする。

『のん? 今どこにいるの?』

 焦ったような真麻の声。
 心配かけまいと鼻声にならないよう大きく深呼吸をした。
 声を震わせてはいけない。

「あ、なんだか迷っちゃって」
「電車が参りますので、黄色い線の内側までお下がりください」

 なんてタイミングで構内アナウンスが流れるのだろうか。
 
『え? 駅?』

 やっぱり真麻には聞こえていた。
 真麻は昔から地獄耳だ。隣の家なのにわたしが泣いているとすぐにわかって駆けつけてくるくらい。

「あーうん。歩き疲れて足痛くなっちゃったからこのまま帰るわ。ふたりでパレード見て」
『なんで? のんだってパレード楽しみにしてたじゃない』
「うん、でもいいや」
『じゃ、私も帰るよ! そこで待って――』
「大丈夫! あっ、電車が来たから切るね。じゃあね」
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