重ねた嘘、募る思い
あっという間に年が明け、正月を迎えた。
毎年藤城家と合同で年越しを迎えるけど真麻は大晦日から夜勤入りで不参加、なんとなくわたしもいづらくて自室にこもっていた。
彼氏のいない正月なんてつまんないとぶーたれる真麻に初詣へ誘われ、なんとなく同行したけどあまりの混雑にすぐに帰って来てしまった。
思わず『陽さんを誘えば?』と言おうと思ったけど口をつぐんだ。
真麻も陽さんのことは口にしないし、こっちが触れることでもないだろう。
名前を口にしなくてよかったと思う。
少しの間だけ、startlineの音楽を聴くことさえ避けていた。
別人なのにそこまで消し去りたいと思ってしまっていたのに正直驚いたくらい。
今は冷静になって聴けるようにはなった。ただ、陽さんと出逢った時に聴いていたstartlineのデビュー曲は無意識に避けていた自分がいた。
そのくらいあの時のことはわたしの胸に深く爪跡を残すくらいのインパクトを与えていた。
認めたくないけれどそういうことなのだろう。
でも、もう大丈夫。
時間が経てば自然と消えてゆくのだから。
身体の傷を修復しようとする治癒能力のようなものが自然と発動するはず。
今までもずっとそうだったように。