重ねた嘘、募る思い

 そして三が日が過ぎ、すぐに仕事始めの日が来た。
 新年会はもう少し後に予定されているので、今日はいつも通りラフな恰好で出社した。飲み会があってもおしゃれな服なんて持ってないんだけど。
 とりあえずOLらしく見えるファーのついた黒のトレンチコートにブラウンのパンツ、足元が寒くないようにショートブーツで完全防備。どうせ社では制服に着替えるんだから何を着ても同じなんだ。

 会長の新年の挨拶が終わり、すぐに仕事が開始となる。
 今までと何も変わらない日常。仕事も相変わらず忙しい。慌しく午前中が過ぎてゆく。
 昼食を取り、甘いものがほしくなって一階のコーヒーショップに行こうかと思ったら先輩に声をかけられた。

「人事部から聞いたんだけど、あのお店は電話注文も受け付けてるんだって。注文してみない?」
「はあ、いいですよ」
「じゃ、注文したい人!」
「ちょっと待った。今日、取引先から大福たくさんいただいたんだよ。これみんなに配って」

 部長が大きな菓子折りの箱を持ってわたし達の方ににこやかに近づいてきた。
 それはこの界隈では有名なみまつ屋の栗大福だった。大きくて味もよく高価なのでなかなか買えないけどこうしてもらえた時はご相伴にあずかるようにしている。

「わーじゃあ、コーヒーよりお茶だよね」
「お茶がいい」

 そんな『お茶コール』を受けて、いそいそとお茶を淹れてみんなで食べた。
 甘くておいしい。こういう時って幸せな気持ちになれるんだよな。少しの間疲れも忘れるくらいだった。
< 27 / 203 >

この作品をシェア

pagetop