重ねた嘘、募る思い

「つっかれた……」

 ついひとり言をこぼしながら帰路に着く。
 正月明け初日は毎年こうだ。
 仕事量もそんなに日々のものと変わってはいないんだけど、年越しと正月で一週間近く働いていないから少し身体がなまっているのかもしれない。
 帰り道、街路樹がイルミネーションで飾られているのを見て、クリスマスイブに行ったT-Bランドのツリーの絵が描きかけで終わってしまったことをふと思い出した。ネットで調べて続きを描くべきか悩む。中途半場で終わらせたくはなかった。
 あの時、陽さんが声をかけてこなければ描き終えたかもしれない。
 なんとなく苛立ちに似たものを覚えて鬱々としてきた。

 そういえば昼に甘いカフェオレを飲まなかった。栗大福を食べたけど、今は別の甘さが欲しい。
 会社を出る前に一階のお店で買ってくればよかった。だけど戻るのも億劫だ。
 しょうがない、駅前のコーヒーショップで買うか。
 苛々が募るのは糖分不足に違いない。欲しいと思うのは身体が欲しているからとよく聞く。
 帰りが少し遅くなるけどと思いながらも駅前のコーヒーショップを覗くと道路に面しているカウンター席しか空いてなさそうだった。
 なるべく奥がいいんだけど(寒いし目立つから)買って飲みながら帰るほうがいいかな。

 お店の前にある木のオシャレな看板を見ながら何を飲もうか考えていた時、後ろから肩を掴まれた。
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