重ねた嘘、募る思い
自然にわたしの足は止まってしまっていた。
なんでわたしの本名知ってるの。まさか真麻が?
ううん、あの子はそういうふうには見えないかもだけど真面目だし、職業柄個人情報を流出するような真似はしない。じゃあどうして?
はっとして自分の全身を見回す。どこかに個人情報ダダ漏れな何かがあるのかもしれない。鞄から社員証がはみ出してるとかっ?
不意に目があった陽さんは勝ち誇った笑みを浮かべて腕組みをし、わたしを見下ろしている。
鞄から社員証ははみ出してない。じゃ、どこからばれたというの?
「たぶん疑ってないとは思うけど、真麻ちゃんから聞いたんじゃない。多分彼女は僕が君の本名を知ってることすら知らないはずだから」
……わたしが思っていることまで完璧に読まれてる。なんだかすごい敗北感。
じゃあなんで、どこからわたしの本名を知ったというの?
どくんどくんと早まる鼓動がうるさいくらいだった。
それを陽さんに悟られないようなるべく音をたてないようにごくりと唾を飲み干す。
そんなわたしの願いは見透かされているようで、陽さんは優越感に浸ったような顔をしている。それすらもかっこよくてさらに憤りを感じてしまった。