重ねた嘘、募る思い
「お茶でもどう? 時間があるなら食事でもいいけど」
何も答えず、首を横にふるふると振って拒絶の意思表示をするけどずいっと顔を近づけられて思わず息を飲んでしまう。
それに気を良くしたような陽さんが口元にわずかな笑みを浮かべた。
「僕がなんで君の名前を知ってるか気にならない?」
「えっ!」
「あは、わっかりやっすーい」
覗きこまれたその表情が揶揄するようにくしゃっと歪む。
不愉快で顔を背けるけど、くすくすと笑う声は止まらない。耐えかねてばれないよう横目で視線を送ると、陽さんは口元を拳で軽く押さえて笑いを堪えていた。
うぅ、完全におちょくられている。悔しい、悔しい!
「さっきのところでお茶する?」
「い、いえ、い、急ぐので」
なるべく冷静な態度を装ってどもりながらもなんとかそう伝えたのに。
「ふーん。じゃさ、僕の携帯に一度コールして。そうしたら今日は諦めてあげる」
……ちょっと待って。なんでそうなるのっ。