重ねた嘘、募る思い
 
 家についてしぶしぶ携帯から陽さんの番号を呼び出してコールするとすぐに通話になった。
 本当に待っていたのだろうか。
 三コールで出なかったら切ろうと思っていたのに、待つ時間のドキドキ感さえ与えられなかった。

『家、ついたの?』
「……はい」

 携帯の向こうから、小さな声で「よかったよかった」と聞こえてくる。
 わたしは面と向かっては男の人とあまり話せないけど、電話だったら話せるんだ。だから今言うしかない。

「あっ……の」
『ん?』
「ま、あさの連絡先、わたし、教えられないけど……向こうから連絡するよう説得してみるからっ……」

 従姉妹を売るような真似はできない。
 だけど真麻から連絡するよう促してだめなら陽さんだって諦めるしかないはずだよね。
 真麻には携帯からじゃなく、公衆電話から陽さんに連絡するよう伝えよう。個人情報をばらさないようにして、なるべく穏便に断りを入れてもらえばいい。

 すると、向こうからぷっとふき出し笑いが聞こえてきた。
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