重ねた嘘、募る思い
6.両親と真麻とわたし
なんとか立ち上がってキッチンに行くと、すでにわたしの両親プラス真麻が鍋をつついて食べていた。
両親が隣同士に座り、父親の向かいに真麻が座ってまるで本当の家族のようだ。鍋からはキムチの匂いがプーンと漂う。
「のん、遅いよー。もう食べ始めてる」
「見ればわかる」
「この軟骨入りの肉団子おいしいよ。早くしないとのんの分なくなっちゃうから」
その団子はわたしがもっとも好物としているものだった。
慌てて真麻の隣に座り、小皿片手に取り始めると母が「まだあるわよ」とお玉でこっちに寄せてくれた。
「真麻、どういうつもりよ」
「え、なにが? 今日お母さん夜勤だもん」
真麻がここにいて、うちでごはんを食べている時点でそんなことはわかっている。
伯母さんも看護師で真麻とは別の病院で働いている。夜勤の時はこうしてうちで食べるのだ。
なんでもそつなくこなしそうな真麻だけど、実は料理だけは苦手。
デートにお弁当を持参したいけど作れないと泣きついて来ることなんてしょっちゅう。それなのに見栄を張って持って行きたいと言うもんだから代わりにわたしが作っていた。
今言ってるのはそうじゃない。
ギッと睨みつけると、きょとんとした真麻が横目でこっちを見ながらモグモグと口を動かしている。